〒673-0009 兵庫県明石市西明石東町2-20(新幹線西明石駅から東へ徒歩15分)

受付時間
9:00~18:00
 定休日  
土曜・日曜・祝日

お気軽にお問合せ・ご相談ください  

078-927-0719

化学製品の開発購買

 書籍に投稿された所長の執筆内容の一例を加筆修正することなくそのまま公開します。化学製品の開発購買(第6節    新製品開発を成功に導くための原材料購買・調達の考え方と具体化を学んでいただけます。

はじめに

ここまでで基本的な技術検討は揃って来たと思います。そこで、次に課題になるのは新製品を社会に送り出していく段階です。世に受け入れられるだけの実現性を整えていくことが肝要になります。

1.研究段階からの巣立ち

 世新製品が世の中で堂々と認められるまでには長い道程を逞しく通っていく必要があります。研究・技術が牽引車であることは勿論ですがそれだけでは成功する保証はありません。

 

1.1.成功のイメージ

 新製品が成功したと言えるのは、世の中に価値が少しずつ浸透し、やがてなくてはならないものとして認められて広く世界中に普及して確たる市場を確立している状態のことです。これこそ研究・技術で日夜努力を重ねて来たことが報われる時です。

 

1.2.技術と経済が融合する開始点

 そうなるための入口には、研究・技術の中に留まっているのではなく、いやおうなしにも技術の外の世界との融合が避けて通れません。その最たるものは経済です。

 

1.3.実現性を追及

 経済とは、この新製品の実現性を確かなものにするための重要な視点です。即ち、『経済性を含めてこの技術が果たして成立するものなのか?』と言う問いかけになります。《いくらで製造できるのか?》《果たして満足できる利益をもたらすことができるのか?》などの関所を無事に通過しなければなりません。

 

1.4.何故、原材料そのものの検討が必要なのか?

 そこで、コストに占める割合が最も大きい原材料費が問題となります。勿論、画期的な新製品にして供給側の論理だけで売値を全く自由自在に高く設定できるのが理想ですが、どの世界にあっても競合するもの(間接的であっても)は何らかの形で存在するものですから売値にも上限と言うのがあると言うのが現実です。従って、満足できる利益を確保するためにはいかに原材料費を低くできるのかが肝心となります。尚、少し関連するものが第2章第1節にありますので併せて参照してください。

 

2.協働の体制が急務

 しかし、研究・技術者は、大学時代を含めても正直言って経済性の教育を全く受けていません。自分で何とかしようと言うのには無理があります。ですから、そろそろこの辺りからは他の職種の人の助けを借りることが必要になって来ます。

 

2.1.購買・調達との協働開始

 結局、原材料の購買・調達の役目を担った組織との協働を開始するべきタイミングになっています。上手に誘導しながら彼らの力を利用することを考えましょう。

3.開発購買の開始

 このように新製品の誕生にまつわる原材料の購買・調達のことを開発購買と称します。正に、そこに足を踏み入れる必要があります。

 

3.1 実はこの段階でコストは殆ど決まる

 社内でコストダウンやコスト削減と言う言葉が飛び交っていると思います。それを原材料に限って見てみると精々数%のコストダウン率にもかかわらず物凄い努力をして追及しています。その成果も市況原料であれば原油絡みの値上げ圧力に会えばあっと言う間に効果が消えてしまったりするのが実状です。実は冷静に考えて見れば新製品開発のこの段階で変動費はほぼ固まってしまっているのです。Aと言う原材料とその購買量が決まってしまえば残されたことは僅かに1つ、それをどれだけ安く買えるかを追求するしかないのです。

 

3.2.反応経路設計と原材料事情

 ですから、これは非常に大きな観点です。いかに経済性の優れた反応経路を設計・選択するかは大きくコストに直結します。そして、経済性を左右するのが選ばれた原材料の供給事情で、もしも世界に1社しか製造していない原材料を選んでしまっては言い値で買うしかありませんから当然安価にはなりません。市場に多量に出回っている普通の原材料を極力使うことがミソなのです。

 

3.3 どこまで内製化するか?

 次に、内製化のレベル設計です。購買すると仮決めした原材料でも、それをそのまま買うのか、それとも少し上流まで自社で製造することにして安価することを目指すのかと言うレベルの設計があります。例えば、世界に冠たるグローバル企業では徹底的に上流原料から内製化することがよく行なわれています。但し、そうなると巨額の設備投資と人材配置が必要になるのでトータルとしてどの辺りまで内製化するのが得策かを見極めることが必要です。結局この検討を通じて、実際に購買する原材料が決まることになります。

 

3.4 試薬から工業品への転換

 更に、基本的な技術確立の段階では大抵は試薬を使って来たことでしょうが、工業品への切り替えを進めるべきタイミングです。パイロットを動かすのに試薬を使っていてはいくらお金があっても足りません。試薬の価格はさして品質も違わないのに工業品の数十倍になっています。

 

3.5.初めから適正価格を狙う

 ここまでで、およそ欲しい原材料をまともに購買できる条件が揃いました。従って次は、賢く安価に買う手立てを講じるチャンスです。ここで、全身全霊を掛けてやらないと、10年ぐらい経ってから遅ればせながらのコストダウン活動をやることになります。自覚がないまま無駄金を捨てることになってしまいます。やはりこの段階で、初めから適正価格で買うための努力をすることがみんなに取って重要です。これをしっかりやれば、①赤字が続くことを社内で非難される辛苦の年月を短縮②新製品の採算化が加速③社会から感謝される時期を促進④採算面から折角開発してきた新製品を不幸にも断念して社会に喜びを提供することが消失するリスクを低下、など好ましい状況が作り出せます。新製品開発の初期に避けて通れない健全赤字ですが、残念ながら部外者は許してくれませんから。

 

3.5.1 適当にどこかからの見積でよいのか?

 そこで、適正価格を掌握することが必要になります。普通やることは見積を取ることです。但し、それは『売りたい価格』に過ぎません。購買・調達担当に見積書を取らせてその結果に満足してはいけません。売り手が言う適正価格と買う立場での適正価格は違うので注意すべきです。

 

3.5.2 商社・代理店は必要なのか?

 次に、メーカーと直取引をするか、商社・代理店を介した間接にするかを精査する必要があります。商社・代理店と言うビジネスモデルは日本特有のもので世界中では希有なものです。従って、直取引が難しい理由があるか、又は、間接取引が好ましい制限条件があるのかなどを吟味します。適正価格から乖離していく原因の1つが商社マージン(決して明かされません)ですからどうしても必要な場合に活用すると言うスタンスが賢明なのかも知れません。

 

3.5.3 品質神話を乗り越える原材料スペック

 上手に購買・調達するための条件緩和策です。できるだけ普通のものを買うと言うのが安価にするための鉄則ですので、特殊なスペックが本当に必要なのかを醒めた目で考え直すチャンスとしてください。基本的な研究段階では品質追求が優先されます。ごく僅かな差でもどれかを選択しなければならない時の結論だけが一人歩きしてしまったり、少し異なるスペックのものをテストしていないのに不可と断定して現在使用中とソックリのスペックを求めたりしかねません。日本製には沢山のスペックの違うグレードが用意されていたりして重宝ですがそれに縛られると海外品が参画できる余地がなくなります。多少の違いは処方・使用条件などを微調整して使いこなす技術を確立しましょう。使いこなせないとすれば技術が未完成なのです。

 

3.5.4 許可・承認制と原材料の変更管理規制

 業界によっては一旦決めた原材料のメーカーを変更するのが心理面を含めて困難と聞いています。許可・承認制に絡んで原材料の変更管理規制がネックとなってメーカーを変更するのは中々難しいようです。そうなると最初にどこのメーカーを選ぶかは非常に重要になることで、適当にやっていては後になって後悔することになります。くれぐれも慎重なメーカー選定が求められます。

 

3.5.5 世界中からベストなメーカーを探す

 原材料が決まった後で重要になるのは『どこから買うか?』です。売値を決める価格政策はメーカーで違いがありますので価格を追求するには相手選びが鍵を握っていることになります。一般的に言えば、そのメーカーの販売量に占める購買量が大きいほど買い手市場になりやすい傾向なので安定供給性を考慮しつつも規模の小さい相手を選ぶのが購買・調達力を発揮するための原則です。従って、知っている限られたメーカーから購買・調達しようとせずに世界中からベストな相手を探し出すと言う気構えで臨むことです。一本釣りは最も下手なやり方です。

4.原材料とプラント設計思想

 以上、ここまで開発購買の勘所を概説しました。次は、本格生産のためのプラント設計と原材料との関連性です。

 

4.1 原材料とプラントの相互作用

 通常、原材料は購買・調達の担当、プラント関係は別の組織となっている場合が多いと思います。前者は定常的に頻繁な発注をすることを前提としているのに対して、後者は一発発注主義ですから違う面が多いので組織として明確に区分しておいた方がよいからです。しかし、新製品開発において両者はお互いに関連性があり相互作用があります。お互いの情報交換・議論・協議などを通じてトータルとしての適正化を図る必要があります。

 

4.2.どちらを優先すべきなのか?

 短期的にはプラントの安価建設が重要、長期的には安価な原材料を優先すると言う考え方になります。初期段階のリスクを考慮すると初期投資はできるだけ小さくしておきたいと言う心理が働きます。一方、化学系では、コスト構成上は変動費の方が減価償却費よりもはるかに大きいと言う場合が多いと思います。従って、開発段階でのリスクは考慮しつつも少々プラント建設費は高くなっても原材料を安価に買うことができるようにする方が長い目で見れば賢明です。

 

4.3.海外調達の想定

 その一例として液体系原材料を海外調達することを想定しておくべきです。国内であればローリー単位での納入を考えて受タンクの容量を30m3程度として設計する場合が多いのですが、海外からの輸入することを考えると20tISOコンテナになるので容量50m3は必須となります。プラント建設費は少し高くなりますが、海外調達することで原材料費を永続的に安価にすることが出来てトータルとして会社の利益を挙げやすくできます。プラント建設費は減価償却で処理するので耐用年数まで来ればそれ以降は殆ど只になるので建設費の増加分を気にする必要はなくなります。急がば回れの関係にあります。

 

4.4.荷姿や性状

 別の例として荷姿や性状なども考慮する必要があります。これらは製造現場での作業性などから来る原材料に関する特定条件です。海外品は通常であれば荷姿はISOコンテナやドラムなのですが、現場では一斗缶を希望する場合があります。通常であれば性状は粉体なのですが、現場では粉塵を抑えられると言う利便性から顆粒やスラリーを期待したりします。特定条件はメーカーの数を激減させ、へたをすると独占品や特注品を買うことになってしまいます。当然ながら高値を迫られることになります。一方、プラント面では、一斗缶なら受タンクが省略できるし、顆粒であれば粉塵対策費を削減できたりしますし、スラリーにすれば遠隔操作にできるので面倒な設備を作る必要がなくなります。いずれにしても極力、普通の条件の原材料を購買・調達できるように努力することです。

5.複数購買への備え

 ここまででほぼ重要な点は見てきたのですが、もう一つ残っているのが複数購買を追及することです。これまで出来ればほぼ完璧です。

 

5.1.万一への備え

 複数購買を実現させる目的として、1社購買のリスク対策があります。過去にも時々この問題で製造が止まってしまう騒ぎがありました。原材料を1社に依存していたらそのメーカーが何らかの理由で生産できなくなったらたちまち玉が切れてしまいます。

 

5.1.1.実は国内調達にはリスクがある

 特に、日本国内からの1社購買になっていると東日本大震災レベルの自然災害が起こればひとたまりもありません。自動車会社の生産が歴史的にストップせざるを得ないと言う前代未聞の事態があったことはまだ記憶に新しいことです。日本は地震・台風・津波・水害など天変地異のリスクをいつも抱えています。昔は国内調達は安心の御旗のように考えられていましたが今となってはそれこそ重大なリスクです。更に、国内市場の長期的なシュリンクと淘汰が進み、益々国際競争力を失ってグローバルに見れば高価な原材料を買う羽目になります。

 

5.2.競合環境の作り込み

 以上のように製造を止めなくて済むための備えとしての保険的価値とは別に、1社購買を複数購買に変えることでメーカー同士の競争を引き起こすことが期待できます。2社目の方が安価であると言うのを知ることになるかも知れません。どんな世であっても無競争は言い値になりやすく、競争が生まれると価格は下がるものです。更に、2社目が海外であればもっと安価になる可能性があります。

6.事例

 以上、ここまで全体的に広く浅く概説してきましたが、やはり事例を見るとイメージを実感できるので分かりやすいかもしれません。ここに示す事例は紙面の制限もあるので一例に過ぎませんが、行間から言わんとするところを汲み取ってください。又、その中で使われているコストダウン戦略や科学的な裏付け情報などにも注目すべき点があります。

 

6.1 課題と目的

 原材料ATBSの例を概説します。

 この場合の原材料面での課題は、見積価格@950円/kgが絶対的だとすると新製品の事業採算性が危ぶまれることでした。因みに、「***の化学商品」(発行:化学工業日報社)では、価格は1000-1500円/kgと記載されていますが、供給者側からのデータですから鵜呑みにしてはいけません。

 

6.2.適正価格の調査

 まず、上記の見積価格は完全に無視して絶対的な指標となる適正価格を調査しました。ここで肝要なことは見積価格に決して惑わされないことです。科学的な根拠を探すことに専念します。

 

6.2.1.輸入価格の解析

 最も信頼性の高い動かぬ証拠を探しました。私のお奨めは世界中の国々から日本の港に着いた時のインボイス単価を突き止めることです。海外のメーカーは赤字でビジネスをするような馬鹿なことはしませんから適正な利潤を織り込み済みの売価を把握することを意味しています。解析結果によれば、CIF@390円/kgであることが分かりました。(表1を参照)

6.2.2.推定販売価格

 次に、主変動費の試算による販売価格の推定をしてみると、@140円/kg程度であることが分かりました。(表2を参照)但し、上記の実績値がありますのでこの推定値は参考値の意味合いに過ぎません。結局、上記に、関税・通関費用・国内運賃などを加味して、目標価格は、@420円/kgとなりました。

6.2.3.世界中のメーカーの調査

 ベストサプライヤーを追及するのですから一本釣りは禁じ手です。世界中のメーカーを調査し

てみると、アメリカのLubrizol Corporation製品が日本ルーブリゾールにより輸入され、MRC

 Unitec Co., Ltd.(旧日東化学)はそれを転売しているものと推察できます。

従って、日本国内の真のメーカーは1社となりそうです。又、更に安価にするには、インドのVinati Organics Ltd.社が期待できそうと読めます。(一部を表3に示します)

6.2.4.価格の交渉とその結果

 以上の情報に基づいて、やることは、先ず、現在の取引先と本気で価格交渉して以前の見積価格を大幅に修正させることです。目標価格は、@420円/kgとしました。

 値下げ交渉の成果は、

開発購買の成果額=(950-400)円/kg*1000*80t/年

             =4400万円/年

となりました。58%OFFの値下げが出来たことになります。

結果的に価格交渉だけでアメリカからの輸入価格同等の400円/kgを獲得できました。従

って、研究開発部門でもこの新製品開発テーマの事業性に見込みが立ったと言うことでこの原料への検討は完了となりました。

 

6.2.5.更なる価格追求の可能性

この事例では上記のように価格交渉した後の更なる検討は省略しましたが、将来インドのメーカーから購買・調達した場合の見込みは下記のようになりました。

 将来、80t/年→160t/年になることを想定すると、インド品の購買開始まで進展させることにより、

開発購買の成果額=(950-400)円/kg*1000*0.1*160t/年+

(950-200)円/kg*1000*0.9*160t/年

          =11680万円/年

となる余地が残っています。76.8%OFFに相当します。

おわりに

 以上で基本的な研究成果を世に出すための原料調達面からの準備が整うことになります。実現性を高めるためにはどれも大切な要素になっていますので致命的に弱点となるような要素を作ってしまわないように十分気をつける必要があることを敢えて指摘しておきます。

お問合せ・ご相談はこちら

お気軽にお問合せ・ご相談ください

078-927-0719
受付時間
9:00~18:00
定休日
土曜・日曜・祝日

お問合せはこちら

お電話でのお問合せはこちら

078-927-0719

フォームでのお問合せは24時間受け付けております。お気軽にご連絡ください。

ご連絡先はこちら

化学原料コストダウン研究所
住所 : 兵庫県明石市西明石東町2-20
TEL : 078-927-0719
FAX : 078-927-0729
E-mail : aipyamamt2007@ip-labo.jp
URL : http://www.ip-labo.jp/